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2024/06/28 人材育成研修 / コーチング
部下のモチベーションを高める強力なスキル
現代のビジネス環境において、チームメンバーや部下のモチベーションを高め、効果的に働きかけるためのスキルがますます重要視されています。その中でも、「アクノレッジメント (acknowledgement)」は、シンプルでありながら非常に強力な手法です。本記事では、コーチングスキルとしてのアクノレッジメントの基本概念と、その実践的な活用方法について解説します。部下の立場での経験や経営コンサルタントとしての視点から、その効果と応用方法を具体的な事例を通して見ていきましょう。
目次
コーチングスキル「アクノレッジメント」とは
アクノレッジメント (acknowledgement)には、「認めること」「承認」「感謝」「礼状」「あいさつ」という意味があり、「相手の存在に気づいていることを伝える」という語源があります。アクノレッジメントは、褒めることや賞賛ということではなく、事実を事実として認めることを指します。
アクノレッジメントには大きく分けて、「存在承認」「行動承認」「成果承認」「成長承認」の4つのタイプがあります。
この4つのタイプを使い分けることは、相手のパフォーマンスの向上につながります。では、それぞれの特徴を見てみましょう。
- 存在承認 存在承認とは、相手の存在そのものに気づいているということを認める行為です。挨拶をする、「コーヒーをよく飲んでいるね」「髪を切ったね」などと相手の変化に気づいて声をかけることが存在承認に該当します。存在承認は、まだ成果を出せていない新人や仕事で行き詰まっている部下に対して使うことで、相手に「私はここにいてもいいのだ」という安心感を与えることができます。
- 行動承認 行動承認は、具体的な行動を認める行為です。「いつも朝早く来ているね」、「顧客とマメに連絡を取っていますね」、「宣言通りに行動していますね」というように、行動をそのまま伝えることでも行動を見ている、認めているというメッセージとして伝わります。
- 成果承認 成果承認は、何か成果を出した際に「目標を達成したね」「最後までやり遂げたね」と達成したことを認める承認です。相手に対して、成果への報酬として強く印象づけることができます。
- 成長承認 成長承認は成長を認める行為です。「以前より提案書が分かりやすくなっている」、「お客様の視点での話が増えていますね」、「短い時間でできるようになっていますね」というように、まだ成果としては形になっていないことでも、その過程の成長を認めることで相手のモチベーションを向上させます。
部下の立場で、上司からされたアクノレッジメントを分析
あなたには、思い出に残るアクノレッジメントの言葉がありますか? 自分の両親や夫、妻、子ども、先生や友人、上司からの言葉もあるでしょう。
それは、どういう言葉で、なぜその言葉は、他にもたくさん受けたはずのほめ言葉の中で傑出して頭に残っているのでしょうか
私も会社員時代に、上司からのされたアクノレッジメントを振り返ってみました。
ご飯ちゃんと食べてる?
これがアクノレッジメント?と思われる方もいるかもしれません。
存在承認のYouメッセージに当たります。体調が悪く休んでいた後に、廊下で上司に言われたのを覚えています。
私は適当に「食べてます」と言いましたが、お昼に食堂も行けない状態でした。そういう変化をどこかで気づいていたのかなと感じました。
一見すると普通の質問ですが、「変化に気づいて伝える」には普段の様子をみていないと言えないからこそ嬉しかったし記憶に残っているのだと思います。
いいプレゼンでした。ディスカッションも仕掛けてくれてありがとう
各自がテーマを決めてプレゼンをするという機会がありました。私が発表後に上司がメールで伝えてくれたアクノレッジメントです。
これは成果承認に当たります。全体の発表が終わり、個別に言ってもらえると、本当にいいプレゼンと思ってくれたんだなという感じがしました。
さらに、プレゼン終了直後というタイミングも良かったです。
前に話した内容を覚えている
私が以前話したことさえ忘れていた内容でも、上司は覚えてくれていて、「あのとき、○○って言ってたよね」と言ってくれました。
これも存在承認ですね。人の話を覚えているというのは、そのときに相手に興味を持って聞いてくれていたからでもあるので、嬉しいですよね。
経営コンサルの立場で使うアクノレッジメント
次に、自分が現在の仕事の中で使ったアクノレッジメントを振り返ってみました。
いつもストレートに意見を伝えてくれてありがとう
これは、組織開発の場面です。職場全員での対話をすると、大抵忖度するので意見が言いづらいこともありますが、20歳の彼女は自分の気持ちをそのままストレートに伝えてくれていました。
ファシリテーションの立場で見ていると、彼女の意見は、本質を突いた意見で組織に必要な内容でもありました。しかし、年配の方が話すと、彼女の話がどこかなかったように流されてしまう場面がありました。私は休憩時間に彼女に「いつもストレートに意見を伝えてくれてありがとう。あなたの意見は今の組織に必要なもので、聞いていて感心している。私もあなたの意見を丁寧に拾っていくので、これからも今のように伝えてほしい」と伝えました。
その後も彼女はストレートに意見を伝えてくれていました。そして、この後、さらに嬉しい出来事がありました。
実は彼女は、外部のコンサルの私にも、あいさつをしてくれなかったり、不貞腐れた態度を取ることがありました。当初は、私は信頼してもらえてないのかなと感じていました。あのメッセージを伝えた後、彼女は組織の問題に自分ごととして悩み、上司に相談をしていました。そのときに、彼女は上司に、「今相談した話を私に伝えてほしい。」と言ってくれたようです。それを上司から聞き、私を信頼して頼ってくれたという変化が感じられとても嬉しかったです。
アクノレッジメントは伝えて終わりではなく、「相手がどのように受け取ったのか観察する」ことまでがアクノレッジメントに必要なステップです。
みんなの前での実演は勇気が必要だったと思うけど、協力してくれてありがとう
これは研修の場面です。グループで場面を想定した練習をした後に、全員の前でやってもらうために、協力者を募りました。
実演となると、意見を言うよりもハードルがあがり、手が上がらなくなります。仕方なく、こちらから指名させていただきました。
彼は、少しコミュニケーションを取るのが苦手な様子であり、ご本人も自覚していました。しかし、研修中は自分を変えようと苦手な役を引き受けている姿も見ていました。協力者を募ったとき、彼はこちらを見てくれて、迷っているような様子を私は感じ取りました。ですので、こちらか声をかけると、「やってみます!」と承諾いただけました。
実演が終わったあとに、全員の盛大な拍手とともに、「みんなの前での実演は勇気が必要だったと思うけど、協力してくれてありがとう。私の難しい質問にも対応してくれて、あなたのおかげで皆んなも理解できたと思う」と伝えました。
その後の研修中の様子を観察していると、グループの中で大きな声を出してメンバーと関わっていました。それまではグループ討議でも、小さい声で相手の目を見て話せない様子でした。そのため、この変化には驚きました。
アクノレッジメントをする場面は、たくさんありますが、効果的に行うには、相手を知り、観察をすることが大切です。
上述した事例は、研修場面ですので、意図的にこちらが設計をしています。彼が何に障害を感じていて、どうしたらそれを乗り越えることができるだろうかと考え、その機会を設定し、アクノレッジメントしています。
- まとめ
アクノレッジメントは、相手の存在や行動、成果、成長を認めることで、個々のパフォーマンスを引き出し、チーム全体の士気を高めるための強力なツールです。上司からの一言や経営コンサルタントとしてのフィードバックが、相手にどれだけの影響を与えるかを理解し、意識的に実践することが重要です。日常の中で小さなアクノレッジメントを積み重ねることで、職場の雰囲気や働く人々のモチベーションが大きく向上することでしょう。アクノレッジメントの力を最大限に活用し、より良い職場環境を築いていきましょう。
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