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2024/10/25 人的資本経営 / 人材育成/研修

できるリーダーは会話ではなく対話を生み出す

できるリーダーは対話を生み出す

現代の組織が求められる変革には、多様な視点を取り入れ、新たな知識や理解を創出する力が必要です。しかし、日々の業務の中で交わされる「会話」が、真に組織を成長させる力となる「対話」につながっているでしょうか?

本コラムでは、「会話」と「対話」の違いに焦点を当て、組織の変革を加速するために「対話型組織開発(Dialogic Organization Development)」が果たす役割について考察します。

目次

1. 対話と会話の違い

2. 違いを尊重し、対話を促進する組織づくり

3.対話型組織開発による組織成長の加速

 

対話と会話の違い

会話とは、主に安心感の醸成を目的としたコミュニケーションの手法です。複数人が互いに話をし、それぞれの事情や経験をもとに共通項を見つけることで、相手との関係性を築きます。一方で、対話は一歩踏み込み、それぞれの違いを顕在化させながら新たな理解や知識を創り出すプロセスです。対話の本質は「違い」を出し合い、それを尊重することで新しい価値を生むことにあります。この違いこそが、私たちの視野や理解を深めるきっかけとなり、互いの個性を尊重する社会を築く一歩にもつながるのです。

対話と会話

コミュニケーション形式の比較

私たちが取るコミュニケーションの形式には、以下のようなものがあります。

  • ディベート: 反対の立場や意見をぶつけ合い、どちらが優位であるかを競う形式です。勝者と敗者が決まるため、対立する意見のぶつかり合いが支配的です。
  • ディスカッション: 特定のテーマについて意見交換をし、さまざまな視点を比較・分析することを目的とします。一方向的な意見の表明や擁護が中心となりがちです。
  • ブレーンストーミング: アイデアの創出を目指し、自由な発想で意見を出し合う形式です。新しい発想を得るために、多様なアイデアが歓迎されます。

これらと異なり、対話は「違い」を持ち込み、そこから共通の意味を創り出す双方向のやり取りです。その過程で、私たちは互いの背景や価値観を理解し、新しい見方や気づきを得ることができるのです。

違いを尊重し、対話を促進する組織づくり

違いがもたらす影響と対話の価値

私たちはどのような「違い」を持っているのでしょうか?少し考えてみましょう。

私たちの性別、年齢、職業、文化的背景、立場、経験、性格などは、価値観や行動に影響を及ぼします。例えば、同じ出来事を見ても、異なる人々は異なる意味を見出します。

私たちの違い

 

こうした違いを対話を通じて共有することで、私たちは視野を広げ、新しい理解を得ることができます。

違いが顕在化した際、人はしばしばそれを「挑戦」や「否定」として捉える傾向があります。この場合、対話は攻撃や防御の反応を引き起こし、衝突や不快感につながることがあります。しかし、違いを「新しい視点」や「チャンス」として捉えることで、対話が深まり、共に考え、共に新たな価値を創り出すことが可能となるのです。

違いへの向き合い方

組織の革新には「対話」が必要
日々の業務で部下や同僚と話す機会は多いと思いますが、果たしてその「話し」はただの会話でしょうか、それとも対話でしょうか?繰り返しになりますが「会話」とは、共通の理解や安心感を醸成するために交わされるコミュニケーションです。お互いに意見を交換し、分かり合うことを目指す「会話」は、仕事の円滑な進行に必要です。しかし、組織にとって本当に大切なのは「対話」であり、これは違いを持ち寄り、新しい理解や知識を生み出すことを目的とします。

「対話」と「会話」の違いを理解することは、リーダーとしての最初のステップです。たとえば、部下があなたの意見に反論してきた場合、それを挑戦と捉えるのではなく、新しい視点として捉えることが、真の対話につながります。対話の中で出会う「違い」こそが、新しい発見や成長の源であり、組織の革新をもたらすものです。

社会構成主義と対話の役割

社会構成主義の考え方から対話の役割について考えてみましょう。

私たちが現実と認識するものは、他者との相互作用を通じて社会的に「構成」されたものです。つまり、現実は一人で完結するものではなく、他者との対話や共有を通して新たな理解が生まれると考えられます。私たちが日々の生活で当たり前だと思っている事柄も、対話を通じて異なる視点を持ち込まれることで、新たな解釈が生まれることがあります。このように、対話は私たちにとって、世界を捉え直し、新たな現実を創り出すための重要なプロセスなのです。

社会構成主義

対話型組織開発による組織成長の加速

対話的リーダーシップが組織成長に与える影響
リーダーが対話を通じて部下と深い信頼関係を築き、主体性や自己成長を促進するアプローチは、組織全体にも多大な影響を与えます。この対話的な関わりが、組織全体の価値観やビジョンを共有する「対話型組織開発(Dialogic Organization Development: DOD)」へと進化すると、さらに大きな変革が期待できます。DODは組織文化に対話を根づかせ、全メンバーが積極的に関与する風土を築くことを目的としています。

  • 対話型組織開発の意義
    対話型組織開発(DOD)は、単なる一方的な指示やトップダウン型の戦略に頼るのではなく、組織内のメンバーが自発的に意見を交換し、新しいアイデアを育む土壌を作ります。リーダーだけでなく全てのメンバーが「対話」を通じて組織の変革に積極的に関わり、組織全体の方向性や価値観を共有することが可能になります。これは、組織の目標やビジョンを明確にし、メンバーが共通の目的意識を持つ基盤を提供します。

 

  • 心理的安全性とイノベーションの推進
    DODを導入することで、組織内の心理的安全性が高まり、メンバーは自由に発言し、新しいアイデアを提案できるようになります。心理的安全性が高い環境は、組織の中でリスクを恐れず試行錯誤できる雰囲気を生み出し、結果としてイノベーションが生まれやすくなります。各メンバーが自己の役割や強みを活かしながら、組織の課題や新しい取り組みに主体的に貢献することが可能です。

 

  • 組織文化の強化と持続可能な成長
    対話型組織開発は、組織文化の強化にもつながります。DODを実践する組織では、全員が共通の目標に向かって協力し合うことで、組織全体の一体感が醸成されます。この一体感は、変化に柔軟に対応できる力として作用し、環境の変化に左右されない持続可能な成長をもたらします。また、対話を重視する風土はメンバー同士の信頼関係を深め、長期的に高いエンゲージメントを維持する要素となります。

 

まとめ:対話型組織開発で持続的な組織成長を実現する

対話型組織開発を取り入れることで、組織内には心理的安全性が育まれ、メンバーが安心して自分の考えを発信し合う土壌が作られます。その結果、個人の成長とともに組織全体が共通の目的に向かって進む力を得て、柔軟で持続可能な成長が実現します。今こそ「会話」から一歩踏み出し、「対話」を通じた組織開発を推進し、変化に強い組織を築く時です。

本日の問い

  • 最近、どんな対話をしましたか?
  • 違いに直面すると、どのように反応する傾向がありますか?
 

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