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2024/11/08 人材育成/研修
リーダーのプレゼンス -言葉を魅力的にするヒント-
言葉は私たちのコミュニケーションの中で最も基本的で重要なツールです。特に管理職や経営者にとって、言葉の選び方はチームとの関係性を築くうえで非常に大きな影響を与えます。しかし、同じ言葉でも、話す相手や状況によってその効果は大きく異なります。そこで、本コラムでは「言葉の輪」という概念を使って、異なる状況における言葉の使い方と、その効果を最大化するためのヒントを考察していきます。
目次
4.第三の輪:集団とコミュニケーションする言葉を活用するヒント
言葉の輪とは何か?—状況別に使い分ける言葉
私たちが日常的に使う言葉は、主に3つの異なる「輪」に分類できます。この「輪」の概念を理解することで、自分の言葉がどの場面で最適かを判断できるようになります。
第一の輪:自分に話す言葉(独り言)
第一の輪は、自分に対して語りかける言葉、つまり独り言のことです。この状態は、自己対話や自己認識を深めるために重要です。例えば、誰かに何かを伝える前に、「自分は本当にこれを言いたいのか?」と自問自答したり、気持ちを整理するために独り言を言ったりします。この言葉は、最も自分自身に向けられたものであり、他人の反応を意識せずに純粋に自分の感情や思考を表現します。
第二の輪:相手に関心・集中する状態の言葉
第二の輪は、相手とコミュニケーションを取る際の言葉です。これは最も一般的な対話の形態で、相手に伝えたいことがあり、その相手が自分にとって重要な存在であると感じている時に使います。例えば、部下に指導を行う際や、顧客に対してサービスを提供する際には、この「第二の輪」の状態で相手に集中し、誠実に伝えようとします。
ただし、第二の輪の言葉には一つの難しさがあります。それは、相手に感情を込めて叱ったり、アドバイスをしたりする際に、感情的に先走ってしまい、気づけば自分の「第一の輪」や「第三の輪」の言葉に戻ってしまうことです。例えば、部下に注意をしたいとき、最初は冷静に伝えようと思っていても、感情が高ぶって自分の独り言に近い形で自己表現してしまうことがあります。このような状況を避けるためには、自分が今どの「輪」にいるかを意識し、適切な距離感で話すことが求められます。
第三の輪:複数の人に話す言葉(全体の関心を引く)
第三の輪は、複数の人々に対して話す言葉です。会議やプレゼンテーション、社内イベントなどの場面で使われます。この言葉は、誰か一人に向けられたものではなく、集団全体に影響を与えるものです。ここで重要なのは、「みんなに対する言葉」として一斉に話すことで、相手一人ひとりの反応を気にすることなく全体の調和を重視することです。
しかし、第三の輪の言葉にも落とし穴があります。それは、集団に対して発言しているつもりでも、実際には単調で自己満足的な内容になりがちなことです。集団全体の関心を引くには、常に個々の反応に配慮し、単調な言葉を避ける必要があります。例えば、企業の全体会議で「皆さん、今後の方針について話します」と言うだけでは、聞いている人々の関心を引くことは難しいかもしれません。そのため、言葉を活気づけ、各人に興味を持たせるために言葉の工夫が必要です。
第一の輪: 自分に話す言葉(独り言)を活用するヒント
第一の輪、すなわち「独り言」の状態は、自己認識や自己管理を深めるために非常に強力なツールです。私たちがまず始めるべきは、この「独り言」を意識的に使うことです。独り言は、自分の思考を整理し、行動をコントロールするための手段として非常に有効です。
自分の目的を再認識する
まず、第一の輪で自分に語りかけるとき、自分が今何を目指しているのかを確認します。目の前の状況に圧倒されているとき、感情に流されがちですが、この独り言の時間を使って自分の目的を再認識することが大切です。例えば、「自分はこの会議で何を伝えたいのか」「今、どんな行動をするべきか」といった具体的な問いかけが効果的です。
自意識を取り払う
第一の輪に入れない最大の障害は、自意識です。「自分がどう見られているか」「自分がかっこ悪くないか」といった、他人の評価を気にするあまり、自己表現ができなくなります。特に管理職や経営者は、他人の期待に応えなければというプレッシャーを感じやすいですが、その思考が強すぎると、自然体で自分を表現できなくなります。自分の目的を明確にしたうえで、他人の目を気にせず、内面に集中することが重要です。
怒りの感情をコントロールする
自分の感情に飲み込まれそうになったとき、「独り言」を使うことが効果的です。例えば、怒りが込み上げてきたとき、相手にその怒りをぶつける前に、自分の内面に目を向け、感情の整理を試みます。「なぜ自分はこんなに怒っているのか」「怒りをぶつけることにどんな意味があるのか」と自問自答し、その後で冷静に対処できる状態に持ち込むことが可能になります。
第二の輪: 相手とコミュニケーションする言葉を使うヒント
第二の輪は、他者とコミュニケーションを取る際の状態です。この状態では、相手の感情や反応にしっかりと耳を傾け、相手に合わせた言葉を使うことが求められます。相手に伝わる言葉を意識的に選び、適切なタイミングで発することが重要です。
相手の感情を理解し、共感を示す
第二の輪で大切なのは、相手に関心を持ち、相手の感情や意図を理解しようとすることです。相手がどう感じているのか、何を伝えたいのかに耳を傾けることで、より深いコミュニケーションが生まれます。例えば、相手が困っているときは、「それは大変だったね」「どうしてそのようなことになったんですか?」といった言葉で共感を示し、相手の気持ちを受け止めることが大切です。
叱るときの言葉
叱るときこそ、第二の輪での言葉を意識的に使います。感情的に激昂してしまうこともあるかもしれませんが、その場合、最初は冷静に第二の輪の言葉を使いましょう。「なぜその行動が問題だったのか」を具体的に伝え、相手が納得できるような説明を心がけます。相手を責めるのではなく、理解を示すことが大切です。
コミュニケーションがうまい人は意図的に第2の輪の言葉を使う
コミュニケーションがうまい人は、意識的に第2の輪の言葉を使い、相手との距離感を縮めることができます。例えば、社長がある従業員に声をかけるとき、普段は集団向けの第三の輪の言葉で接している従業員に対して、突然第2の輪の言葉を使うことで、従業員は「2人きりの状況」にいるような感覚を抱きます。この時、従業員は社長との距離が縮まり、より親近感を感じることができます。
このような接し方をする社長は、必ず相手の名前を呼びます。名前を呼ぶことで、相手が自分に注目されていると感じ、感情的なつながりが生まれます。また、名前を呼ぶことで、第三の輪ではなく、個別の関係を意識した言葉で話すことができます。このような配慮によって、従業員は自分が大切にされていると感じ、信頼感や安心感が高まります。
コミュニケーションが下手な社長は第三の輪の言葉を使い続ける
一方、下手な社長は、声をかけるものの、ずっと第三の輪の言葉のままで接します。この場合、従業員は「社長はやっぱり第三の輪の存在なんだ」と感じ、距離を感じてしまいます。「何で声をかけられたんだろう?」「緊張するし、迷惑だな」と思うことが増えてしまうのです。
このような状況を避けるためには、意識的に第2の輪の言葉を使うことが重要です。相手に対して親しみを持ち、感情のやり取りをしっかりと行うことで、相手は自分の存在を大切にされていると感じ、コミュニケーションがスムーズになります。
第三の輪: 集団とコミュニケーションする言葉を活用するヒント
第三の輪は、グループや集団に向けてコミュニケーションを取る際の状態です。この状態では、広い範囲に配慮し、全体の雰囲気や共通の目的に意識を向けることが重要です。しかし、時にはその場の状況に応じて、言葉の使い方を意図的に「ずらす」ことが、より深い効果を生むことがあります。
状況と言葉をわざとずらす
集団に向けて話す際、状況や流れに合わせて言葉を変えることは非常に有効です。例えば、ある校長先生が集会で話し始めたときのシーンを想像してみましょう。最初に校長先生が「皆さん、夏休みはどうでしたか?」と、第三の輪の言葉で全員に問いかけます。
しかし、その後、校長先生は急に一番前にいる生徒に向かって、「夏休みはどうだった?」と、第二の輪の言葉を使いながら、続けて「自分も子供の頃は焼きすぎたな」と、過去の自分を振り返る第一の輪の言葉に変えます。そしてさらに、「痛かったな、皮がボロボロに剥けたな、本当に痛かった」と、感情を込めた第一の輪の独り言を続けます。
このように、状況は第三の輪でありながら、言葉が第一、第二、第三の輪を行き来することで、話が非常に多様で豊かなものになります。こうした言葉の使い分けにより、単調なコミュニケーションに変化を与え、話の魅力を増すことができるのです。
3つの輪を意識的に移動する
もし、第三の輪の言葉を使い続けた場合、話が単調になりがちです。どんなに内容が面白くても、同じ調子で話していると、聞き手は興味を失うことがあります。そこで、第一の輪、第二の輪、第三の輪を行き来しながら話すことで、内容に変化を持たせることができます。
例えば、集団での会話でも、「皆さん、どう思いますか?」という第三の輪の問いかけから始まり、次に「自分もこう感じたことがあるんです」といった個人的なエピソードを第一の輪で語り、続いて「でも、みんなの意見も大事ですから、どうですか?」と再び第三の輪の言葉に戻す。このように、言葉の輪を移動させながら話すことで、話の内容が豊かになり、聞き手の心に響きやすくなります。
言葉が自然に動くことで、集団の中での一体感を生み出し、会話のダイナミズムが増します。言葉をただ一つの輪に閉じ込めず、場面に応じて使い分けることで、聞き手に対して多層的なメッセージを届けることができるのです。
まとめ:言葉の輪を使いこなすことで豊かな対話を実現する
言葉の「輪」は、自分との対話、相手とのコミュニケーション、集団への呼びかけという3つの異なるレベルで使い分けられます。自己理解を深めるための「第一の輪」、相手に誠実に向き合う「第二の輪」、集団全体に影響を与える「第三の輪」それぞれに役割があります。意識的に「輪」を使い分けることで、場面に適した言葉を選び、深みのある対話を生み出すことができるのです。
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