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2025/06/10 人材育成研修

研修は意味あるのか? 課題設定こそが成果を左右する

「社員に研修を受けさせれば、会社は良くなる」 そう信じて、時間とお金をかけて実施したにも関わらず、「現場での変化が見えない」「結局、何も変わらなかった」という声を聞くことは少なくありません。多くの中小企業から「社員教育を強化したい」「研修を導入したい」というご相談をいただきますが、よくよく話を伺うと、そもそも課題の本質が研修で解決できる内容ではないことも多いのです。本コラムでは、「社員研修は意味があるのか?」という問いを起点に、「課題設定の重要性」と「研修が効果を発揮する場面」、そして「研修では解決できない場面」について、事例を交えて3つの章で詳しく解説します。

目次

1. 課題設定の精度が研修成果を決める

2. 研修が成果を発揮する「技術的課題」の場合

3. 研修では解決しない「適応課題」の場合

課題設定の精度が研修成果を決める

研修は目的ではなく手段

「研修=万能薬」と捉える風潮は根強くあります。しかし、研修はあくまで手段であり、目的ではありません。真の目的は、業績の向上や組織課題の解決であり、それに向けて「今、何に取り組むべきか」を明確にすることがスタート地点です。ここで重要なのが、「技術的課題」なのか「適応課題」なのかの見極めです。

  • 技術的課題:知識やスキルの不足に起因する問題であり、教育や訓練により解決可能。
  • 適応課題:価値観の衝突や組織文化に起因する問題であり、対話や構造の見直しが必要。

課題設定に必要な問い

  • なぜその問題が起きているのか?
  • それは知識やスキルで解決できるのか?
  • 組織や関係性に根差した背景はないか?

これらの問いに答えることで、研修が有効かどうかが見えてきます。

研修が効果を発揮する「技術的課題」の場合

ケース:営業チームのプレゼン力不足

ある企業では、「営業プレゼンが通らず、受注率が低い」という悩みがありました。調査の結果、提案内容は良いが、伝え方に課題があると判明。このケースでは、プレゼンテーションスキルという明確な技術的課題が特定され、実践型の研修を実施。ロールプレイングやフィードバックを重ねる中で、社員の表現力が向上し、3ヶ月後には受注率が20%改善しました。技術的課題に対する研修は、条件が整えば確かな成果につながります。

成果が出る研修の条件

  1. 現場課題と連動していること
  2. ゴールが明確で、測定可能であること
  3. フォローアップが設計されていること

研修では解決しない「適応課題」の場合

ケース:コンプライアンス違反が相次ぐ職場

ある中小企業では、複数の社員が繰り返しコンプライアンス違反(顧客情報の持ち出しや、経費の私的利用)を行っていました。経営陣は「コンプライアンス意識が低い」と判断し、全社向けに法令遵守研修を実施。しかし、違反は止まりませんでした。調査の結果、以下のような組織的背景が判明しました。

  • 上司が部下に不正を黙認する発言をしていた
  • 成果至上主義が強く、「多少の違反は見逃す」文化があった
  • 内部通報制度が機能しておらず、問題が見過ごされていた

研修では変わらない「組織の空気」

このような組織では、社員の行動は「何を教わったか」ではなく、「職場でどんな行動が黙認・容認されているか」に大きく左右されます。いわゆる”組織の空気”や”暗黙の了解”が、研修の内容を凌駕してしまうのです。この問題に対しては、以下のような構造的アプローチが求められます。

組織開発という処方箋

このような深層課題に有効なのが「組織開発(OD: Organization Development)」です。組織開発とは、構成員間の対話や関係性の質に働きかけ、組織全体の思考や行動のパターンを変容させるアプローチです。たとえば、次のような取り組みが効果を発揮します。

  • 対話型ワークショップ(心理的安全性の醸成)
  • 部署横断の課題共有ミーティング(風土の変革)
  • リーダーシップの再定義(役割と期待の明確化)

組織開発は「正解を教える」のではなく、「一緒に考える・作り出す」営みです。研修がインプット中心であるのに対し、組織開発はプロセスと関係性に重点を置く点が本質的に異なります。適応課題への対応には、組織開発的アプローチが極めて有効です。

研修の位置づけを見直す

研修が意味を持つのは、組織文化の改革と並行して実施されるときです。対話を通じて価値観や行動規範を再定義し、その後に行動指針や実務スキルを定着させる“補強手段”として活用されるべきです。つまり、適応課題への研修は「はじめの一歩」ではなく「最後の仕上げ」。この順序を誤ると、いくら予算を投じても効果は期待できません。

まとめ:課題を見極めたうえで、最適な手段を選ぶ

「研修に意味があるのか?」という問いに対し、答えは「課題による」というのが正確です。

  • 技術的課題であれば、適切な設計と実行により、研修は確かな成果を生みます。
  • 一方、適応課題には、制度・文化・関係性への介入が求められます。

経営者や人事担当者がまずすべきことは、課題の本質を見極めること。「課題は何か? それは研修で解決できる性質のものか?」この問いに真摯に向き合うことが、人材育成の成功の第一歩となるのです。

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