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2025/04/04 組織開発 / コーチング
なぜ若手が辞めるのか?〜物語が交差する職場のつくり方〜

「突然、辞めたいと言われた」「不満はなさそうだったのに」──そんな経験はありませんか?多くの中小企業で、離職の背景には「わかってもらえない」という気持ちが潜んでいます。給料や待遇の問題だけでなく、自分の考えや気持ちを話せない職場で、人は静かに離れていきます。本稿では、社員の声が埋もれてしまう理由と、そこにある「対話の不足」に注目します。社員一人ひとりが、自分の物語を語れる職場。そんな「物語が交差する場」をつくるためのヒントを、具体的にお伝えしていきます。
目次
離職が多い職場で何が起きているのか?
「わかってもらえない」から、静かに人が去っていく
「どうして急に辞めてしまったのか分からない」「普段は何も言わなかったのに」──これは、近年多くの中小企業で聞かれる声です。表面的には大きな不満を表明することもなく、静かに離職の意思を固めていた――そんなケースが増えています。
背景にあるのは、価値観の変化です。
特にZ世代と呼ばれる若手社員は、「意味がある仕事をしたい」「自分らしさを大切にしたい」といった内面的な動機を重視する傾向があります。
かつてのように「黙って耐える」「とにかく3年続ける」という考え方とは一線を画しており、「なぜこの仕事をやるのか」「この組織にいる意味はあるのか」を常に問いながら働いています。
ところが、その価値観に上司や経営者が向き合わず、「今の若い者はわがままだ」「甘えている」と一蹴してしまえば、若手は「わかってもらえない」「自分の意見なんて聞いてもらえない」と感じ、早晩その職場から離れていきます。
ここで起きているのは、単なる世代間ギャップではありません。
それぞれが持っている「仕事観」「人生観」といった“物語”が交わらないことによる、対話の断絶です。
「違い」が見えない組織は、内側から壊れていく
こうした問題が顕在化しづらい理由のひとつに、表面的な“平和”があります。
職場で衝突が少ない、波風が立たない──それ自体は一見良いことに見えますが、実はその裏で「本音が言えない」「違和感があっても黙ってしまう」という空気が広がっていることも少なくありません。
とある中小企業の事例では、定期的な1on1や評価面談で「特に不満はありません」と言っていた若手社員が、ある日突然、退職を申し出たことがありました。
その理由を離職面談で初めて聞いたところ、
- 「この仕事に意味を感じられなかった」
- 「自分の意見を言える雰囲気ではなかった」
- 「否定されるのが怖くて、本当の気持ちを話せなかった」
という声が返ってきたのです。
つまり、「違い」を出すことができなかった、あるいは出すことにリスクを感じていたために、本来ならば共有されていたはずの「葛藤」「価値観のズレ」「未来への不安」が共有されることなく、離職という結果に至ったのです。
「言ってくれればよかったのに」では遅い
このようなケースで経営者が口にするのが、「何か言ってくれればよかったのに」という言葉です。
しかし、社員からすれば「言っても意味がない」「どうせ受け入れられない」と思っていることが多く、すでに“あきらめ”が根付いている可能性があります。
ここで重要なのは、「言わない」のではなく「言えない」という現実に気づくことです。
対話が機能していない職場では、「違い」は表出されずに沈黙として蓄積し、やがて信頼の断絶、そして離職につながります。
これは、単に若手の問題ではありません。管理職同士、経営層と現場、パートスタッフと社員――立場や役割の違いがある限り、職場には常に「見えない違い」が存在しているのです。
「違い」は職場の“リスク”ではなく“資産”になる
対話を避ける職場では、違いは「面倒なもの」「衝突のもと」として扱われがちです。しかし実際は、「違い」を健全に表出できる場があることで、組織は以下のような力を手に入れます。
- 新しい視点やアイデアが生まれる
- 認知のズレが早期に共有され、軌道修正ができる
- 社員が自己理解を深め、主体的に動くようになる
つまり、「違い」が対話を通じて交差し合うとき、組織の学習と進化が起きるのです。
そのためにはまず、社員一人ひとりが「自分の物語を語れる場」を持つこと。
そして経営者自身が、「私はあなたの話を聞く準備がある」「違いは歓迎されるものだ」というメッセージを態度で示すことが不可欠です。
「物語が交差する場」が生み出す組織の力
対話とは「違いを持ち寄り、意味を共創する」プロセス
対話とは、単なる雑談や会議ではありません。互いの背景や価値観、過去の体験という“物語”を持ち寄り、それらを交差させることで、新しい意味や理解を創っていく営みです。
たとえば、「最近モチベーションが上がらなくて…」とつぶやいた部下に対し、「最近忙しいからな」と返すのではなく、「それって、何がそう感じさせてるの?」と問いかけてみる。その一言で、相手の物語が立ち上がります。
そして、部下が「実は、今の仕事に意味を感じられていない」と話し始めたとき、そこから「じゃあ、どんな仕事なら意味を感じられる?」「それを今の仕事とつなげる方法はあるかな?」という探索的な対話が始まります。
マネジメントは「物語を探る探偵」であれ
マネジメントの本質は、人の“行動の背景にある意味”を理解することです。これを象徴的に語っているのが、有名なイソップ物語の「レンガ職人の寓話」です。
同じ仕事でも「見ているもの」が違う
ある旅人が道端で働く3人のレンガ職人に、それぞれ「あなたは何をしているのですか?」と尋ねます。
- 最初の職人は言いました。「見て分からないか?レンガを積んでいるんだよ」
- 次の職人は言いました。「大きな壁を作っているんだ」
- 最後の職人は、こう答えました。「私は、歴史に残る大聖堂をつくっているんです」
彼らがしている仕事は、すべて「レンガを積む」こと。しかし、見ている“目的”や“意味づけ”がまったく違います。最初の職人は、ただ与えられた作業をこなす人。二人目はプロジェクト単位で捉えています。そして三人目は、自分の仕事の先にある社会的意義を見据えています。
この違いが、その人のモチベーションや成長意欲、創造性を大きく左右します。
経営者がすべきは「意味の問い」を立てること
マネージャーや経営者がすべきことは、社員一人ひとりの「今、この仕事をどう捉えているのか」という物語=意味のレイヤーにアクセスすることです。
たとえば、毎日営業報告をしている社員がいたとしても、
- 「ノルマをこなすための作業」と捉えているのか、
- 「お客様の役に立っているという実感」を得ているのか、
- 「自分の成長や夢のステップ」として捉えているのか
──その解釈は人それぞれです。
ここで、「どんな思いで今この仕事をやってる?」「この仕事に、どんな意味を感じてる?」という問いを投げかけることが、物語を引き出す第一歩になります。
そして、その物語を一緒に眺め、「どうすれば、あなたがより意味を感じられる仕事になるか?」を共に考える。それが、対話的マネジメントの要です。
対話文化を育むために、経営者ができる3つの実践
①「問い」を変える:「どうした?」より「どう感じた?」
対話を生むには、マネージャー側の“問い”を変える必要があります。
事実確認ではなく、主観や意味を探る問い──たとえば「それって、あなたにとってどういう意味?」「なぜ、それが気になるの?」といった問いかけは、社員にとって「話してもいい」と感じさせる入口になります。
②「話す」前に「聞く」:耳を傾ける姿勢が信頼をつくる
経営者や上司が「正しい答え」を先に出してしまうと、対話は生まれません。
相手のペースで、相手の物語を聞き出す“間”が重要です。
部下の「実は…」を引き出せるマネージャーは、それだけで人材育成の達人と言えるでしょう。
③対話を「日常の営み」に落とし込む:1on1・朝礼・定例会議の活用
対話は特別な時間にだけ行うものではありません。1on1ミーティングや朝礼、定例会議など、日常的な場面に「意味を問い合う」時間を意識的に組み込むことが重要です。
たとえば、「今週一番うれしかったことは?」「この1ヶ月で印象に残っている学びは?」といった問いを投げるだけでも、社員の“物語”を可視化できます。
まとめ:社員の「物語」に触れることが、経営の力になる
経営とは、数字を動かすことだけではなく、「人の意味」を支える営みでもあります。社員一人ひとりの物語が交差し、そこから新しいビジョンが生まれるとき、組織は進化します。あなたの会社に、社員が安心して“違い”を語れる場はありますか?「物語が交差する」対話の文化を育むことは、これからの経営における最大の資産になるはずです。
ビズユーコンサルティングでは、対話を生み出す組織づくりのご支援をしています
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