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2025/04/18 組織開発
平等では成果が出ない─エクイティを経営に組み込むべき理由

「うちは全員に同じチャンスを与えている」「制度は整えているのに不満が出る」。そう感じたことのある経営者や人事担当者は少なくないでしょう。この違和感の正体は、「平等(Equality)」と「公平(Equity)」の混同にあります。「平等」は“同じ扱い”を意味しますが、「公平」は“違いに応じた合理的な支援”を指します。見かけ上の平等ではなく、実質的な力を発揮できる環境の整備こそが、いま企業に求められている「エクイティ(Equity)」です。本稿では、エクイティの考え方と実践について、経営の視点から紐解いていきます。
目次
エクイティとは何か─平等と公平の決定的な違い
平等(Equality)=同じものを与えること
平等とは、すべての人に同じ機会・条件・ルールを適用する考え方です。
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全員が9時出社
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同じ評価制度で査定
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同じ試験・面接で選考
これは「不正のない仕組み」としては理にかなっているように見えます。
公平(Equity)=異なる条件に応じた支援を行うこと
一方で公平とは、スタート地点の違いや困難の有無に応じて“合理的に差をつける”ことです。
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育児中の社員には柔軟な勤務時間を
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日本語が母語でない社員には伝わりやすい指示や振り返りを
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聴覚障がいのある社員には字幕やビジュアル資料を
これは特別扱いではなく、「全員が力を発揮できる状態を整える工夫」です。
なぜ区別が必要か
平等な制度を整えても、誰かが“活躍しづらい”環境にあるままでは、力が発揮されず、成果につながりません。それは個人の問題ではなく、環境側の設計ミスとも言えるのです。
エクイティが求められる背景─見えない格差と構造の罠
Go To Person とは何か?
「Go To Person」とは、何かあると頼られる存在、困ったときに相談される人を意味します。スピード感があり、仕事の質も高く、対応力もある。多くの場合、評価され、キャリアの中心にいる存在です。一見、組織にとって欠かせない人物のように思えます。しかし、その人ばかりに仕事や期待が集中していないか?その影で、他の人に経験が偏っていないか?ここに、エクイティの視点が必要になります。
「いつも頼られる」ことが、成長スパイラルを生む
ある社員が「Go To Person」になると、次のような好循環が起こります:
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頼られる
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経験値が積める
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成果が可視化される
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評価される
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キャリアの機会が開ける
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さらに頼られる
これ自体は悪いことではありません。むしろ理想的な人材育成の形とも言えます。ただし、問題はこの機会が他の人にも“等しく開かれていない”場合に起こります。
頼られない人に機会が回らない理由
Go To Personに偏る背景には、以下のような無意識のバイアスがあります。
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「話しやすい」「ノリが合う」からつい任せてしまう
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前に成功したことがある人にまた頼んでしまう
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失敗されるリスクを避けて、“安心な人”に集中する
こうして、挑戦機会が固定化され、他のメンバーには「重要な経験」が回らなくなります。経験がなければ自信もつかず、上司も評価しにくい。こうして、成長機会の格差はさらに広がります。
組織全体で見ると、これは“構造的不公平”
この現象は、個人ではなく「組織の構造」によって引き起こされています。
バイアスのあるアプローチ
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一部のGo To Personにだけ情報・期待・機会が集中
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他のメンバーは周辺に押し出され、学びも評価も少ない
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組織の力は一部に偏り、属人化・停滞につながる
バイアスのないアプローチ
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意識的に機会を分散・共有
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「まだ頼られていない人」にも試す機会を与える
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全員の成長を通じて、組織力が底上げされる
つまり、「誰にチャンスが配られているか?」という問いは、エクイティの最前線そのものなのです。
エクイティ経営とは、「Go To Personを増やす設計」である
エクイティを導入する組織では、以下のような工夫が効果的です
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「次は別の人に任せてみよう」という上司の意識づけ
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実践経験を平準化するためのOJTローテーション制度
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チャンスの“見える化”と分配のトラッキング(偏りチェック)
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評価の視点を「結果」だけでなく「プロセス」や「挑戦」にも向ける
目的はただ一つ。「頼られる人を組織に分散させる」こと。全員がGo To Personとして頼られ、学び、貢献できるチームこそ、強い組織です。
合理的配慮とは“特別扱い”ではない
合理的配慮の基本概念
「合理的配慮」とは、障がい者権利条約および障がい者差別解消法に基づき、障がいのある人に対して、過重にならない範囲で必要な調整・変更を行う義務を意味します。ここで重要なのは、「異なる扱いを求めること」自体が差別ではなく、むしろ配慮しないことが「不当な差別」とされる点です。
たとえば:
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面談時に筆談や字幕を求める
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エレベーターが必要なフロア設計
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視覚資料に音声説明を加える
などは、「要求」ではなく、「社会的な壁を取り除くための当然の対応」として求められるのです。
なぜ合理的配慮が必要なのか?
社会の前提が「健常者向け」に設計されている
現在の社会の多くの仕組みやルールは、無意識のうちに健常者の便利さを基準に作られています。そのため、障がいのある人にとっては「不利益な状態(バリア)」が存在しやすくなります。合理的配慮とは、この“構造的な不均衡”を意識し、不利益を受ける側の視点に立って再調整する行為であり、最低限のルールです。
合理的配慮の3つの要件
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社会的な障壁を取り除くことが目的であること
既存のルールが健常者向けに偏っていることを認識し、不利益を被っている人が本来の力を発揮できるように環境を整える。 -
個別のニーズを踏まえること
障がいと一口に言っても千差万別。性別、年齢、属性、文化背景などにより求める配慮は異なるため、一律の支援ではなく「本人と相談しながら柔軟に対応する姿勢」が重要。 -
過重な負担を課さない範囲であること
事業者にとって実行不可能なレベルの配慮を求める必要はなく、提供者側の事情を踏まえた「バランスある配慮」が原則。
合理的配慮=「やさしさ」ではなく「責任と設計」
合理的配慮は、決して「気遣い」や「特別な優遇」ではありません。
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困っている人を目の前にしたとき
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困難を排除すれば、その人が力を発揮できると分かっているとき
社会として「それを行うべきである」とされている、公共的な責任なのです。
合理的配慮が機能するためには「対話」が不可欠
合理的配慮を「制度」ではなく「文化」として根づかせるために重要なのが、対話のプロセスです。
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本人が本当に必要としている配慮は何か
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事業者としてどこまで対応が可能か
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その調整にどのような代替案や工夫が考えられるか
こうしたすり合わせのプロセスがあることで、「関係性に基づいた納得解」が生まれ、制度以上の柔軟性が育まれていきます。
合理的配慮は“障がい者支援”にとどまらない──組織の未来を支える考え方へ
合理的配慮の考え方は、障がいのある人に限らず、あらゆる多様な働き手に適用できます。
たとえば:
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外国籍社員のための言語支援
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育児・介護中の社員への柔軟な勤務体系
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発達特性のある社員への業務構造の工夫
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「頼られていない社員」への意図的なOJT機会の設計(Go To Person対策)
これらもすべて、環境的ハードルを減らし、全員が力を発揮できる状態をつくる=エクイティ実現の手段です。
まとめ:公平な環境設計が、すべての力を引き出す
「制度は整えているのに、不満が出る」「同じチャンスを与えているのに、活躍できない人がいる」。その違和感の根底には、“平等”という美徳に隠れた“構造的な不公平”が存在します。エクイティ(公平)とは、見た目を揃えることではなく、一人ひとりが力を発揮できる土台を整えること。それは「特別扱い」ではなく、組織の持続的な成長のための“経営的判断”です。合理的配慮や経験機会の偏り是正(Go To Personの構造改善)を通じて、すべての人の可能性が引き出され、チーム全体の成果と創造力が高まっていきます。“違い”を活かし、“全員が成長できる組織”を目指すこと。それこそが、これからの経営に求められるエクイティの実践なのです。
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