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2025/04/22 組織開発
日本企業のためのDEI戦略──理念から経営・人材育成までの実践ガイド

日本企業が持続的に成長していくためには、多様な人材がその力を最大限に発揮できる仕組みが不可欠です。DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)は単なる人事施策ではなく、経営戦略と人材戦略をつなぐ“土台”となる視点です。このコラムでは、DEIを「経営と人をつなぐ戦略」として再定義し、理念と制度のギャップを乗り越え、組織文化に根づかせるための考え方をご紹介します。
目次
経営戦略と人材戦略をつなぐDEI
日本企業にありがちな“山だけ見て人を育てない”構図
多くの企業では、「新市場開拓」「グローバル展開」「デジタル化」などのビジョンは掲げていても、それを担う「人」の多様化や育成が後手に回っている企業が少なくありません。経営が「この山に登る」と決めても、その山を登るための人材を育てていなければ、実行不能な戦略に終わります。
欧米と日本企業の根本的な違い─「人に戦略を合わせる」か「戦略に人を合わせる」か
欧米企業では、「組織は戦略に従う(structure follows strategy)」という原則が経営に深く根づいています。まず戦略を定め、その戦略を実行するために必要な組織体制・職務・人材を設計します。ジョブ型雇用を前提とすることで、戦略に応じた柔軟な人材配置や採用が可能となります。
一方で、日本企業では「今いる人材ありき」で組織がつくられ、「その人たちでどう戦略を回すか」が起点となるケースが少なくありません。いわば“戦略が人材や組織に従っている”状態です。この構造の違いが、戦略の実行可能性やスピード、柔軟性に大きく影響を与えているのです。
雇用の流動性が低いからこそ、組織設計が難しい日本企業
さらに日本では、終身雇用や年功序列といった雇用慣行が根強く残り、人材の流動性が低いことも課題です。欧米のように「戦略に応じて外から戦略人材を調達する」柔軟な組織再編は難しく、“今いる人材でどうにか組織をつくる”という内向きな設計になりがちです。その結果、せっかく掲げた戦略も、人材や組織との整合性が取れず、実行段階でつまずくケースが後を絶ちません。だからこそ、日本企業にとってDEIは単なる社会的責任ではなく、“今いる人をどう活かし、どう育てるか”を起点とした戦略設計の必須要素となるのです。
DEIでつくる「戦略と人材の連動設計」
DEIを経営戦略と人材戦略の“ハブ”と位置づけることで、
- 経営層は「どんな人材に、何を期待するか」を明文化
- 人事は「どんな支援で、どこまで育てるか」を設計
- 組織文化は「多様な登り方を認める柔軟性」を備える
というように、“登る山”と“登る人”をつなげるマネジメントが可能になります。
理念としてのDEIと手段としてのDEI
なぜ制度だけでは職場は変わらないのか?
制度としては「ある」。でも実際は「機能していない」。 その原因は、「理念」と「手段」が分断されていることにあります。
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理念だけ掲げても、現場の納得を得られない
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手段だけ実行しても、目的が見えないから続かない
DEIにおいて、「なぜやるのか(理念)」と「どうやるのか(手段)」は一体運用されて初めて意味を持ちます。
統合のポイントは「経営理念」と「人材ビジョン」
統合の鍵は、DEIを企業理念・経営理念に組み込むことです。
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なぜこの会社はDEIに取り組むのか?
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DEIは、どんな事業や未来につながっているのか?
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この会社における“誰もが力を発揮する”とはどういうことか?
これを言語化し、社内外に伝えることで、施策が理念と接続し、DEIが自社固有の文化へと育ちます。
実践例:理念と手段を接続する3つの仕組み
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キャリア面談で経営理念と社員の思いをつなげる
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制度設計時に「経営理念・人材ビジョン・DEI方針」を同時に見直す
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「理念浸透×制度利用率」などのクロス指標で効果を測定する
日本的DEIの設計
なぜ米国モデルがそのまま機能しないのか?
米国のDEIは、人種・宗教・ジェンダーなどの差別是正を起点とする制度的枠組みによって発展してきました。 対して日本では、終身雇用、年功序列、同質性の高い組織文化など、前提がまったく異なります。そのため、米国モデルを形式的に導入しても、「なんとなく違和感がある」「定着しない」「活用されない」状況に陥りやすいのです。
日本的DEIの設計原則
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対話と合意形成の文化に根ざす
上意下達ではなく、現場と経営の双方向の「キャリア自律×経営理念の重なり」が鍵となります。たとえば、職場単位でのダイアログや、職種を越えた意見交換の場を定期的に設けることで、現場からの声が経営に反映されやすい仕組みが生まれます。このような対話の積み重ねによって、DEIが理念だけでなく日々の意思決定や行動に根づいていきます。 -
「多様なキャリアのあり方」を評価制度に組み込む
年功評価・属人的評価からの脱却が求められます。たとえば、昇進の条件を単一のモデルで測るのではなく、専門性・リーダーシップ・地域貢献・社内育成など、複数の貢献軸を評価指標として認めることが重要です。異なる登り方が組織にとって価値あるものと認識されることで、社員は安心して自分らしいキャリアを選択できるようになります。 -
インクルーシブな職場環境を“組織風土”として再構築
DEIを「制度」として終わらせず、「組織文化」として育むことがポイントです。たとえば、上司からの一方通行の指示ではなく、部下からもフィードバックを受ける“両方向のコミュニケーション”を評価の対象に含めたり、チームで成果を上げた場合にそのプロセスを称賛する文化を育てたりすることが効果的です。制度の外側にある“空気”までDEIの視点で見直すことが、職場に持続可能な変化をもたらします。
まとめ:DEIとは、「人づくり」を通じた「企業づくり」
日本企業におけるDEIは、欧米の制度を模倣するのではなく、文化や雇用慣行に即した“自社らしい実装”が求められています。
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経営戦略と人材戦略をつなぐ「仕組み」としてのDEI
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理念と制度をつなぎ、現場で生きる形へ進化させる運用
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対話・評価・風土を通じた、インクルーシブな職場づくり
これらを踏まえたDEIの再設計は、単なる制度導入ではなく「人と企業の成長を支える構造改革」です。
ビズユーコンサルティングでは、エクイティを軸にしたDEI施策の導入・定着をご支援しています
DEIを単なる制度導入にとどめるのではなく、経営戦略と人材育成の中核に据えることで、企業の持続的な成長と、社員一人ひとりが力を発揮できる組織づくりをお手伝いしています。「理念で終わらせない」「現場に根づく仕組みをつくりたい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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